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別れの日が近づく

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別れの日が近づく

 日ごとサスケやホクトが可愛くなり、情も移ってくる。みな平等にと思ってはいても、それぞれ個性の差があり、私の好みも反映されてしまう。

 中でもサスケは頭の良さで私を攻略しようとしたのか「なついたふりでニンゲンなんていちころさ」とでも考えたのか、常になついてくれると情もほだされる。そして、ヌーボーとした表情、加えて仕草がおかしく可愛らしく惚れてしまった。
 太い足と大きな手。後ろ足を後ろに伸ばしきって伏せをするような感じでべたーと伸びている様子は見ているだけで顔がほころぶ。もち応えのある手もなんとも言えず触り心地が良い。

 家にあげてくれと言わんばかりに土間からやってくるが、勝手に上がっては怒られると思い「ごめんなー。どっちかがシッコするしあげてあげられへんねん」という言葉を理解してか、あきらめてくれる。その後ろには必ずホクトがついてくる。
 しかし3度ほど、その大きな顔と鼻を上手に使い、障害物をどけて、いつのまにか室内にいた。その度に私の言うことは同じ「シッコせえへんかったか」そして抱きかかえて土間に下ろす。そういう時「おこられんのちゃうやろか」という風情をするのもまたおかしい。

 ある時、畑に行こうと玄関の建具をちゃんと締め切らず、私だけ外に出たつもりが、ふと見たらサスケがいた。少しだけの隙間に鼻を使って開けたようだ。これにはびっくりした。
 また、門の外に出た瞬間にサスケも出ていた時があった。すでに私の後ろにいた。身のこなしも素早い。一人でどこかに行ってしまうことはなく「はよ入り出たらアカン」と言ったら、ちゃんと戻ってくれた。以後、私も気をつけたが、サスケは無理に出ようとしなかった。
 土間には、客間に続く縁があるが、そこにもいろいろと物を置いて上がれないようにしていたつもりだったが、ちゃんと隙間を見つけて上がっていた。私は外にいて、庭に出る縁の窓越しにサスケを発見。油断もすきもあったもんではないが、なかなか頭がいい。以後、客間に続く縁はさらに物を置き、出かける時は建具を閉めるようになった。

 言うことを聞きたくない時には後ろ足を伸ばしきって寝そべる。ハウスとか家に入れとかいう時だ。まだ入りたくないのだろう。仕方がないから抱きかかえる。そういうことも数回あった。それさえ可愛い。シッコで怒っていた私がウソのようだ。ただ、自分のシッコを踏んで後ろ足が濡れても平気なのがニンゲンの身勝手で不潔を考える。まあ、私の腿には前足が触るのだからよしとしておこう。

 ホクトは「お手」が可愛い。ヌッと出す。その出し方がなんともいい。

 サスケとホクトは共同戦線を張るようになった。サスケが凛にジャンプして飛び乗る、ホクトは凛の尻尾を噛む。凛がサスケにむかっていくと、ホクトが間に入る。凛がサスケに唸り挑みかかると
ホクトはサスケの加勢にまわる。
 本気の喧嘩かと一瞬びっくりした私が「こらっ」と一括するとピタッとやめてくれたのは良かった。
 凛の怒りは私が2匹を可愛がったからのようだ。体の大きなサスケとホクトが立ち上がって私の腿に前足を寄りかからせると、体の小さな凛は仲間に入れないという事実がある。もっとも足は2本しかないので、2匹がそれぞれ1本ずつ独占したら凛の分はない。
 凛もおいでと言っても、間にわりこめない現実。上から手を差し出して撫ぜてやろうとするが体をかわし、ううっと唸っていたのは自分が仲間に入れないのが気に入らないからだったのかもしれない。「ボクのかあちゃんとるな〜」だったかも。
 この時も本気の喧嘩かと思う勢いで噛み合いが始まりかけたように見えたが「こらっ」の一括でピタっと止まったのは飼い主冥利につきると思った。

 ずっと私を独占していた凛には、こういう場面が重なりすぎて、だんだん面白くなくなってきたのかもしれない。最初のうちは譲っていても、だんだんと腹が立ってくることはニンゲンにもよくあることだ。
 凛太郎は自分の思い通りにならないといつまでも吠えるという「親の顔が見たい」と言われるような難儀な点がある。ホクトがゲージから出てこないといつまでもゲージの前で吠えている。そんなことをしているから、いつまでたってもホクトが出てきてくれないというのがわからないのだ。
 凛にはこう言った。
 「なんでも自分の思い通りにはならんのやしな」
 自分に向かって言っているようでもあった^^;

 また、こんな面白い場面も見た。凛対サスケ&ホクトで3匹が伏せ状態で向かい合っていた。まるで会議中のようだった。

 3匹の生活も明日か明後日で終わる。飼い主さんの都合でまだ決まっていないが、どちらにしても後1日か2日でお別れだ。
 あっという間に9日間が過ぎた。
 
 2匹がいなくなると、凛も私もきっと寂しくなるだろう。

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